本文へ移動

風と草

大谷翔平と臨済禅師

2023-03-23
こんにちは、副住職の源さんです。

WBC日本代表、優勝おめでとうございます。
野球観戦が好きな私としては、おおいに楽しませていただきました。

実は私、ヤクルトスワローズのファンなのです。
不調だった村上選手のサヨナラタイムリー、ホームランには、胸が熱くなる思いでした。

ところで、決勝のアメリカ戦の開始直前に、大谷翔平選手がチームメイトに語った、以下のスピーチが話題になっています。


僕からは1個だけ。
憧れるのをやめましょう。
ファーストにゴールドシュッミトがいたりとか、センターみたらマイク・トラウトがいるし、外野にムーキー・ベッツがいたりとか。
野球やってれば、誰しもが聞いたことあるような選手たちがいると思うんですけど、今日一日だけは憧れてしまったら超えられないんで。
僕らは今日超えるために、トップになるために来たんで。
今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう。
さぁ、いこう!


私はこの言葉を聞いて、臨済宗の開祖である臨済禅師の、次の言葉を思い出しました。


仏に逢うては仏を殺し、
祖に逢うては祖を殺し、
羅漢に逢うては羅漢を殺し、
父母に逢うては父母を殺し、
親眷に逢うては親眷を殺し、
始めて解脱を得ん


とっても物騒な言葉ですよね。
額面通りに受け取れば、殺すだなんてとんでもない!ということになります。
もちろん、臨済禅師の伝えたいことは、本当に「殺せ」ということではありません。
刺激的な言葉を使い、私たちを叱咤激励しているんです。

ブッダを崇拝し、偉大な先輩を崇拝し、
修行者を崇拝し、父母を崇拝し、親族を崇拝するところから、
さらに一歩踏み出して、それらを乗り越えて、初めて私たちは悟りを開くことができる。

そんな意味でしょう。

ひとは成長する中で、たくさんの偉大な人々から影響を受け、憧れ、あんな立派な人になりたい!と頑張ります。
しかし憧れている限りは、そういった偉大な人々の影響下にあるばかり。
本当の意味での「自分」を確立することはできません。
憧れた人々を乗り越えていった先に、自分にしか見えない景色が広がっている。
そこを目指さないでどうする!と臨済禅師は語っているのだと思います。

憧れを持ち、ああなりたいと努力することは大切です。
しかしいつかは、憧れの存在を越えなければならない日が訪れます。
その時、自分の中の憧れを「殺す」ことができるか。
それができなければ「自分」なんて確立できないんだ。
大谷選手と臨済禅師の、厳しくもありがたい教えです。

28才にしてこの言葉を語り、二刀流を貫き、そして見事にアメリカ代表に勝利して、世界一になった大谷選手。
本当に立派な方だと思います。
あんな風になれたなら、と憧れてしまいます。

私もいつか大谷選手を乗り越えられるように、まずはしっかりと憧れて、日々頑張っていきたいと思います。

改めて、日本代表、おめでとうございます!
感動をありがとう!
それでは、源さんでした。


TOPへ戻る