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風と草

牡丹花下の睡猫児

2020-04-10
こんにちは、副住職の源さんです。
 
境内には牡丹がたわわに咲いています。
高貴で優雅な雰囲気を持った花ですよね。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花とはよく言ったものです。
 
さて、本日ご紹介する掛け軸は、建長寺・建仁寺の住職を歴任した湊素堂(みなとそどう)老師の墨跡です。
 
「牡丹花下の睡猫児」(ぼたんかかのすいびょうじ)
 
暖かい春の日差しに包まれて、牡丹の下で子猫がうとうと眠っている。
なんとも平和な光景ではありませんか。
 
ところがどっこい。そこは機鋒をもって知られた素堂老師。
我々に禅問答をしかけておられるのです。
 
「牡丹の下で猫が気持ちよさそうに眠っている。しかし人が近づくと、さっと逃げてしまう。猫は本当に寝ていたのか?それとも寝たふりをしていたのか?さあどうだ、答えてみろ!」
 
この公案は古来より有名で、次のような答えが知られています。
「猫のこころは花にはない」(室町時代の禅僧・瑞渓周鳳)
「猫のこころは舞う蝶にある」(東福寺霊雲院所蔵『方語』)
答えているようで答えていない。
いかにも禅問答ですよね。
 
この公案は武道の達人に響くようです。
柳生一族で有名な新陰流は「新陰流を学ぶものはこの言葉を体得せよ」と言っています。
無防備に眠っているように見えて、実はまったく隙がない。
本当の達人とはそういうものなのでしょう。
 
心を無にして、ひとつのところにとどまることがない。
そうすればあらゆる状況に対応できる。
そんな問いかけなのでしょう。
春うららかな光景を想像させると思いきや、背筋を伸ばされてしまう掛け軸です。
 
今月もがんばってまいりましょう。
それでは、源さんでした。
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